2003年横浜市民福祉保健研究発表大会 旅のバリアフリーを広げていく

『障害があっても旅行がしたい。』
これってどこか、変だと思いませんか?
バリアフリーとかを求めるならば、この考えは言ってることとやってることが、逆を指してると思うのです。
『旅行に行きたいんだけど、自分の障害のことが気にかかる』
これが、バリアフリーの考え方から導き出される、きちんとした表現だと思います。

研究テーマ

  1. 外出時の問題と不便な点の現状
  2. 現在の工夫と解決方法、これからの希望
  3. 現実にあったこととメデイアでの取り上げられ方

★外出時の問題と不便な点の現状

荒天による移動の制限と危険性のために断念する事
 上肢機能障害のために、握力が弱く可動域が非常に狭いために、運転免許の取得のためには、経済的に負担をすれば可能ではあるが、莫大な負担になるために、現在の状況では不可能である。
 そのために、現在は公共機関を利用するが、水はけが悪いところを含め、足もとが非常にとられやすく、転倒による大ケガがあるため、荒天時は全ての事をキャンセルをせざる得ない状況である。
 また、傘を閉じる事ができない。現在のワンタッチで閉じられる傘には重量があり、手指機能障害のあるものには、重すぎて使いづらい物となっている。レインコートを着用した場合、一般の人に物事を頼みながら行動する私には、頼み、引き受けてもらうためのマイナス要素になる。また、濡れているために座席に座れない、足元に水滴が溜まりやすいなど、危険性が増すためこの方法は削除していく。
ラッシュ時など人混みでの行動
 歩行困難である事と、転倒による大ケガを配慮し、人混みやラッシュ時などの行動に制限がかけられている。
目的地およびアクセスに関する状況など
 下肢機能障害のために、数段の団差や階段昇降は不便である。ただし、車いす常時使用者ではないので、昇降が不可能ではないが、転倒の際大ケガをする。また、独歩ができるために、体の変形に気付かれる事も少なく、対応を依頼すると上手くかみ合わないことが多い。
身につけているものの着脱、私物・金銭の出し入れ
 上肢機能障害のために、衣服の着脱が困難である。またポケットを利用する事が難しいため、バックを利用するが、細かい作業が難しいために、バック等の私物の出し入れが難しい。また、金銭などはつかみにくく、ほとんどができないために、自力での金銭の出し入れは断念するようにしている。ただし、時間があって、テーブルの上などでする場合は、若干可能である。
トイレの仕様
 四肢機能障害を含め、洋式トイレである事ときれいである事を最重要ポイントにしている。下肢機能障害の配慮のため、洋式トイレであれば身障トイレでなくても利用は可能。ただし、和式のトイレを改造したような狭いトイレと、荷物を扉にかけるタイプは利用ができない。また、水周りを含め、きれいに保たれた場合でないと、バックや自助具など置いたりができないので、非常に困るのである。

★現在の工夫と解決方法、これからの希望

荒天による移動の制限と危険性のために断念する事
および
ラッシュ時など人混みでの行動
 基本的に、用事はキャンセルできる条件にしている。また、知人等に送迎を依頼、またはタクシーを利用する事がある。
 福祉送迎サービスなどで対応されればよいが、前もってする予約の機関が非常に早く、天気などの予測がつけられないために、利用ができない。「今日だけ」「明日だけ」などの柔軟な利用ができるようになれば、ぜひ利用してみたい。ただし、異性送迎で密室での1対1の状況になるのは不安があるので、同姓同伴なりのサービスであると利用をしたい。
 また2については、現在はそういった予測されるものは避け、時間をずらすしかないと思われる。ただし、介助者をつけることで車いすを利用し、転倒の危険性を回避する事もできる。しかしこの場合、通勤等日常のことや、突発的なことに対応ができない。また、現在の設備的なバリアフリー状況では、行動が制限されるので、判断が難しく、歩行に頼り、体に負担がかかることも少なくはない。
目的地およびアクセスに関する状況など
 webサイトなどで情報を収集するほかに、知人からの情報提供で事前に調べることが多い。明らかに無理と判断される場合でも、介助者をつけることで車いすを利用し、思い浮かべられる危険性を回避する事もできる。また時折、場所によってはスタッフなどが抱きかかえてくれることもあるが、多少抵抗がある。
 やはりどの施設にもエレベーターが設置されている事が、なによりの期待する条件である。
 また、上肢機能障害をカバーするためにレストランなどでは、平皿に盛り付けてもらうこと、ストローやフォークを用意してもらうことを依頼する。ただし、事情を察してもらうまでに時間がかかるので、逐一状況を話すことにより、理解を求める。
身につけているものの着脱、私物・金銭の出し入れ
 着脱を予測している場合は、コートなら大きめのチャックの物、パンツスタイルなら、ヒップハングでベルトで止めるものなど、事前に自分の工夫でできるものを着用するようにしている。同伴者がいる場合は、依頼して克服する。また、気付いたスタッフが対応してくれることが多い。必ずお礼を言って、自身のサイトで紹介するようにしている。
 金銭の出し入れは、自力でする事により無理をするのではなくて、取り扱うスタッフに責任を持ってもらい、対応してもらう。また、クレジットカードを使うことがある。ただ、サインの行為が若干難しいので、デビットカードで支払えるものは、そちらを優先し、暗証番号をいれるだけと言う、サインより簡単なので利用がしやすい。

トイレの仕様
 webサイトなどで情報を収集するほかに、知人からの情報提供で事前に調べることが多い。洋式トイレがなく、明らかに無理と判断される場合は、現地の人に自分の利用したい仕様のトイレ形態を説明し、探してもらったりする。事前に、自分の使いやすい仕様のトイレがあった場合、その時に済ます場合も多い。
 また、手指機能障害により自助具の出し入れ等すごく大変なので、補助的に利用しやすいシャワートイレがあると、スマートに行動できるので望ましい。シャワートイレがない場合でも、バックがすぐそばに置ける台があったり、汚物入れのふたがすぐ閉まらないものなど、小物での工夫だけでずいぶんとトイレの仕様と言うものは変わってくる。
 水周り等がきれいな事は望ましいが、メイクコーナーがあると、そこで小物の出し入れなどができるので、そういった対応でも、使いやすいトイレである。

★ 現実にあったこととメデイアでの取り上げられ方

 世の中に出れば、同姓か異性しかいません。同姓介助だけでやってこられた人は、ラッキーな人です。だけど、恋人同士だったら、介助が四六時中ついてたり、ましてや家族と一緒なんて…普通に考えたら、いやじゃない?
 仕事だってそう。介助者や親がいつもくっついてるなんて、いろんなチャンスを全部見逃してる。飲み会に誘われても、家族の時間にあわせて行動しているなんて、いろんな経験を自ら潰してしまう。仕事+@で働くことの意味が膨らむのに、それができないのが障害のあるせいだったら…バリアフリーにすればいい。
 バリアフリーなんて、設備とハートが合わさって、意味を果たすものだと思うのです。
 私は旅行をしたことがありませんでした。先天性障害と家庭の事情にはさまっていた私は、養護学校の修学旅行が初めてで、最後だとも思っていました。そんな贅沢なことをしたいとも思わなかったのです。
 初めての温泉旅行。それは彼氏からのプレゼント。文字にしてしまえば普通の恋人同士のお話。だから、そんなに気になる問題でもないようです。バリアフリーとか平等というのであれば、恋愛をすることだって普通でしょう。だけど、これってとても大切な事。そのなかには、すごく大変だったり、悩んだり、精神的な問題も積まれているのです。
 私の場合は恋人ですが、これが家族でパートナーに介助が必要な場合でもぶつかってしまう壁でもあったのです。

 私が温泉旅行をプレゼントされた時、ざっと上がっていった問題は、これ。

  1. それなりにリーズナブルであること
  2. 障害者だからといって断られないこと
  3. スリッパ歩行でなくてもいいこと
  4. 部屋までの階段がなく、各所もできるだけ段差がなければいい
  5. 食事形態は和式に床に座らないこと
  6. できればウォシュレットトイレ または 洋式トイレ
  7. 浴衣のサイズがいくつかあること
  8. 貸切(家族)風呂であること

 なぜ、バリアフリー設備のある部屋、建物と言うのは価格の高くて立地条件のいい所ばかりなのでしょう。地元の雰囲気などを感じるのも、1つの旅の楽しみなのに、シティホテルや1流ホテルばかりです。また、激安特集などでも「バリアフリー(ハンディキャップ)ルームは除く」なんてあるのでしょう。それは、需要が少ないと思われてるからなんですね。少ない所からは、きちんといただくなんて…。障害者がもっと旅をしなくては、競争率もなく価格も下がらず、悪循環が続くだけだと見えます。
 『障害者だからといって断られないこと』なんて言うのは、条件としてあげるのもおかしいのですが、実際にはまだある現実でもあります。これは、いまだ理解が浸透されてない証拠というのもありますが、相手が分からないから断るところも多いようです。ですから、自分の状況を説明した上で、障害があるということを明かし、宿をとるということを、必須にするととても対応もよく、気持ちよく過ごせました。
 スリッパの歩行ができないので、自前のもので上履きを用意したりすることも、伝えなくてはなりませんでした。事細かな自分の状態を話すと、親切なところでは階段や段差の状況についても、宿側の不安も含め説明してくれます。また、食事が大勢の部屋で、床座りの形態だとしても、事情を話すと工夫してくださったり、部屋出しにしてくださるところもあります。とにかく、きちんと話し合うことによって、お互いが快適に過ごすための事前準備に必要なことなのです。
 私の場合は、自助具をできるだけ使わずに、体の負担を減らすために、ウォシュレットトイレを毎回希望しています。雑誌などでは、"女性にうれしい特集"などでは書かれていますが、旅行出版物、障害者関係出版物では、ほとんどない情報となっています。事前に宿を決める時の条件にしていますが、念を押して聞いておかないと、故障していた…なんていう事も、ありえなくありません。
 それでも落としてしまいがちな、自分の必要な項目はあります。私は先天性障害で、運動機能に制限があるために、成長が著しい部分があります。ですので、大人で予約していても、浴衣などは子供のものでないと体に合いません。そういった個人的な事も聞き、自分で用意しなくてはいけないチェック項目を作るのも、必要なことです。
 そして最後に、私のぶつかった壁は、異性介助です。私の場合、入浴というものは自力ですることは不可能です。温泉という分野は、入浴介助という部分で、絶対的に同姓介助を求めたい部分です。いくら恋人同士といえども、異性に入浴介助をしてもらうと言うのは、緊張も負担もあります。それを「異性と行く」という事で、介助の壁と精神的な割り切りをしなくてはなりません。
 『貸切(家族)風呂であることについて』が絶対条件になります。大浴場というものを経験したことはありません。たとえ混浴でも、"どういった状態で見られているか分からない"のは、とても不安ですし、いやなことです。これは私の年齢がそうさせてるものかもしれませんが、少なくとも女性は片隅に持っていると思います。また、他のお客様に気を使わせてしまうなど、ゆっくりすることが出来ない、気が休まらないと言うことも、介助するほうにしても、されるほうにしても、双方にあります。

 確かに、通常より手間はかかりますが、自分にぴったりな旅をコーディネートできるのは、自分しかいないのです。これは誰にでも共通のことであり、楽しむためのちょっとした一手間に過ぎないのです。これだけの条件でも、設備や情報公開にバリアがなければ、削られる困難な部分は多くあります。
 障害者旅行について問い合わせたり調べていくと、世にあるバリアフリーをうたったものに私の欲しい情報、中間層である"こうなってたら自分でできるのに"という障害者のための情報は、極端にありません。どちらかといえば、家族や女性向けの雑誌の方があるくらいです。"ラッキーな同姓介助者がいる人"のみを対象にした、そんな情報発信でよいのでしょうか?
 専門誌ではなく、一般メディアで1つくわえて『バリアフリー設備です』など、くわえていったらどうなのでしょう。どっちにしたって、細かい条件は自分達で確認しなくてはならないのですから、大まかな枠だけあればいいのです。そこで近頃は、旅情報など載っている一般誌のwebサイトの検索機能には、バリアフリーと言う項目が追加されて行くようになってきたんだと思います。webのように誰でも利用するメディアには、今後もこういった配慮をしていかなくてはならないと思うし、それがないと生き残って行くのにも難しくなっていく現実になることを願います。