あゆの珍冒険

2002年6月30日 ChairWalkerなあゆのW杯決勝観戦

やってまいりました!W杯決勝戦!!
”あゆちゃん、お願いがあるんだけど…”と、車椅子席ならチケットが取れそうという
悠々さんのメールから始まった、ドッキドキの大きなイベントの参加。
そして世界中の人が着ちゃうんだ。
この世界中が注目する祭典の当日は、雨の予報。
ドイツVSブラジルって、いつも優勝候補でありながら直接対決は初めてなんだって。
中山美穂と辻仁成の「やっと会えたね」って、感じなんでしょぉ?
もともとサッカーは好きなほうだけど、世界のチームとかよく分からない。
クレソンだかセレソンだか、カールだかカーンだか、
そんな区別もできないあゆは、それでも、そこで出ていく事が大切なんだ。そう思った。
だから決勝進出が決まって、猛勉強ですよ。
ワケわかんないのに見てたってつまんないだけじゃん。どうせなら楽しまなくちゃ。

手作りTシャツお昼ごろに悠々さんがお迎えに来てくれて、
おそろいをアレンジした手作りサポーターTシャツ装着!(\\。-)ヘンシン(-。//)
前日までヒヤヒヤして、普段雨だったら外出できないあゆに、
いろんな方法を考えて、なんとか一緒に楽しませようと、試行錯誤してくれた悠々さん。
生まれて初めてのフェイスペイントなどほどこして、
ゴミ袋加工の簡易車椅子レインコートなど引っさげて、いざ出発!
前日の大雨がよかったのか、会場に向かうまでは雨に打たれずに行く事ができた。
だけど、電車に乗るにも、なかなか大変なんだということを、改めて感じる。
実は大きな太鼓、スルドっていうサポーターグッズを持ってたから、
余計に大変だったんだけど。(^^;)
ドア際に立ってる人が、ちょっとずれてくれれば、スムーズに入れるのに。
エスカレーターを駆け上がる人がいなければ、ずいぶん安定して利用できるのに。
エレベーターを使わずに階段を使える人が、使ってくれたら、
降りて入れてくれるようなら、何度も見過ごさずに、普通に行動できるのに。
でも、知らないから、行動ができない。それも痛烈に感じる道中だった。

日韓共同開催と言うことが決まったのは6年前。
日本代表の予選敗退“ドーハの悲劇”があって、2年後の事。
あゆは高校生の時で、深夜ラジオで観戦して、ショックを受けたんだった。
それからメキメキ力をつけてきたトルシエ・ジャパンや、
世界中の人がくる事で、注目を始めた人も多いはず。
日本も、韓国も一丸になって、この今世紀初のワールドカップを見守ってきた。
今まで近くて遠かった、日本と韓国。それがこの共同開催と言うことで、

W杯列車内
W杯列車
from
横浜市営地下鉄

一般の人たちが歩み寄っていき、すごく仲良くなって、近づいて行こうとした事が、
たぶん、一番の収穫になって行ったんだと思う。
ケミやBOA などの日韓共同制作応援ソング、
日韓合作映画、日韓同時デビューのチョナン・カン。
みんな様々なカタチで、世界の一員として参加してる。
そんな輪の中に、世界の流れに、今、自分はどうやって参加していけるんだろう。
ふと思った時に、あゆの周りでは大きなプロジェクトを組んで
韓国と仲良くなろうとしてる人がいた。
通称“たろ”さん。
お友達と呼ぶには失礼かもだけど、とてもよくしてくれるあゆのお兄さん的存在。
直接なにか協力はできないけど、ゆっくり見守り、成功する事を願っていた。
だけど、気づくとたろさんしか、障害者はいないのだろうか。
どんな特集を見ていても、写真や映像でも、一般のサポーターしか映っていない。
しかも日本のメディアと言うのは、日常風景に車椅子がある姿、白杖がある姿と言うのは、
避けるかのごとく、切られている。
外国の映像とかは、普通にあるのに。「どうして?」そう感じる人って、いるのだろうか。
いろんな国の人はいるのに、いろんな年齢の人はいるのに、
障害者って、こう言うの嫌いなのかな。
そこに「ちょっと待った!」と思ったあゆ。
だって、あゆの周りにサッカーを始め、こう言うことが好きな人、楽しい事が好きな人、たくさんいるもの。
じゃあ実際、そう言う人はどこにいるのか、あゆが決勝戦を見に行って注目してこようじゃないの。
そう思ってた矢先、神奈川新聞で記事を書くことになった。
生まれて始めての組み合わせ。
そんなわけで、まず自分が観戦にいたるまでの考える事を、
疑問と照らし合わせてまとめてみた。

チケットを手にスマイルあゆちゃん
決勝のチケットだよん

普段あゆは、そう言うイベント事に『人混み=危険』となって、いろいろ避けてきた。
そう、だから出るのもおっくうになり、最終的にあきらめる。
そのほうが誰にも迷惑かけずに楽でいられるから。
たとえ歩けたって、たかが知れてるこの足じゃ、無理って思ってたから。
あゆだって「なんとかして一緒に行こう!」と、
今回一緒にいってくれた悠々さんがいなきゃ、
あきらめる気になっていたんだもの。
無謀だと思ったって、いろんな雰囲気をあゆに感じさせてあげたいって、
いろいろ考えてくれたひとがいて、それでまた1歩踏み出すことができたんだ。
ドキドキと、緊張がいり混ざって、
いろんな気持ちを手荷物に決勝戦観戦に行くコトになった。
手荷物検査で、ひっかからないかなぁ。

今回“車椅子”と言う、あゆの最低限のスペースを確保できる状況を創って、
参加する事が決まった。
だけど簡単でない道のりも、また現実。
だからこそ、途中で手を差し伸べてくれた人には、とても、とても感謝してる。
応援する気満々の格好のあゆたちに「自分たちの分も応援してきて」と、
車椅子に乗っているあゆの視線まで視線を落として、
声をかけてくれたのが嬉しかった。

警備の人と駅前風景 新横浜W杯記念オブジェ前


地下鉄で新横浜の駅前へ出ると、
ドイツサポーターと、レプリカユニフォームを売る人、
警備隊の人たちで、街はごった返してた。
中には日本レプリカ、イングランドレプリカを着ている人も多くて、
想い思いのカッコをして、お祭りを楽しんでいた。
その中に入れたことが、なんだか感動だった。
だけどそれはそのあとに、もっと大きなモノに変わった。
一緒に行ってくれた悠々さんのの仲間が集まり、
競技場までのお祭り騒ぎの道を、一緒に行ってくれる。

ミサンガをリボンにして
ブラジルミサンガを
髪に結んで

普通に歩くだけでも、大変な人混みの中、車椅子を押して、一緒に。
いろんな雰囲気をあゆに感じさせてあげたいって、いろいろ考えてくれてるんだ。

人のいない道を選んで進んでしまえば、目的地なんてすぐにいけるのに、
あえて誰とも変わらない道を行く。
人混みの中では、見知らぬ外国人の人も車椅子に気づき、
横を歩いてくれたりして、お祭りを楽しめるように気配ってくれたりした。
だけど、悲しい事に、日本の若い人は、我先にと思うのか、
空間があると思って突っ込んでくる人が多く、何度も車椅子にぶつかってきた。
人の目線には入らないくらい、低い位置にある車椅子。
ベビーカーだってある。
そして歩きタバコは人混みでは危険なはずなのに、平気でしていて、
車椅子ではちょうど目の高さにタバコが来てしまう。
とても危険で怖い。
もう少し、こういう時でも周りに目を向けられないのかと、海外と日本を比べてしまう。
比べてもどうしようもないと、なってしまうのが寂しいな。
そうじゃない若い人だっている。
だけど、悪い行動の方が際立ってしまうのも社会だから、
みんながみんな気をつけるようにならないと、
良い行動をしてる人まで巻き込んじゃう。
そんなのかわいそ過ぎるじゃん。

悠々さんのサンバ隊仲間ブラジル応援の波に入って競技場に向かっていると、向こうからセクシーお姉さん。
外国の、ひょっとしたらブラジルの、お姉さん。
7車線向こうのスルドを持ったあゆたちのいる波を見つけ、
国旗を大きく広げてアピールを始め、歌ったり応援のコールを始めた。
横断歩道で合流すると、そのお姉さんに続けと、
いろんな人がサポーターの波に入って、
応援のコール、ブラジルコール、はたまた日本コールを始めた。
サポーターのたまっているところへ差し掛かった。
競技場のゲート別に分かれる道のて前の、川沿いの広っぱの辺り。
今度はブラジルサポーターがサンバを踊ったり、
楽しく、活気良く応援をしている。
そこで一緒になって騒ごうと、輪の中に入れてくれた。
なんとなく輪になって、全然知らない人たちが、応援だけを統一させて、
老若男女世界中、そしてあゆというチェアウォーカーまでも一緒になって、
大騒ぎしたのが新鮮で、楽しかった。
写真を撮りあったり、ダンスをしたり、ビデオを廻したり。
なんでもあり。

ロナウドのヅラで照れる男の子
ロナウド坊や?

ロナウドカットのヅラをつけてる小さな子がいて、恥ずかしそうに。でも可愛いんだ。
声を出して楽しめば、そこは誰もが主役で、普段生活してる中では感じられない、
なにも差別のない世界。
必要なのは楽しむココロと、一緒になるココロと、応援までできたら最高!てな感じ。

国際競技場までの道で、チェアウォーカーは駅前で見た数名だけだった。
そんなにチケットが取れないのか、あきらめてこないのか、
疑問と不思議でいっぱいだった。
しかし、ゲートまで行ってみれば、チェアウォーカーはいる。
車で着ている人が多いみたいで、そういった楽しみ方をせず、
ここでしか出逢えない出会い方、触れ合い方を知らずに、
急に世界をワープをしてきてしまったのだ。
あゆにその”もったいない事”をさせたくないと、大変だろうが、
あゆから“もったいないなぁ”と、思わせてくれた事が、本当にうれしい。
テンションも、雰囲気も、徐々に染まって行く楽しみ方というのも、
ぜひ経験して欲しい。
いろんな人に。
そのためにも、日常の理解というのも不可決なんだ。

行列風景横浜国際競技場前


車椅子席正面実際に案内された車椅子専用席と言うのは、
普段はいすが取り付けてあったりしている、1階バックスタンド席。
通常のの車椅子席とは違い、案内してくれたボランティアさんも困惑してしまうくらい、
とても簡易的だった。
見渡す限りは、普段の車椅子席には、誰も通されてない。
サポーターがたまっているだけになっている。
なぜそんな風に思うかというと、
人とぶつかることなどで安全を確保してるつもりなんだろうけど、
ちょっと位は覚悟してると思うんですね。
そしてそこは、車椅子に座ったままでは試合が1つも見えないという、
とんでもない欠陥席だったから。
せっかくのカテゴリーでも、隔離された雰囲気、ガラ空きの両サイド、
そして前列の人が立ち上がるだけで、なにも見えなくなる。
前々列に背の高い人がいると、その次の人はいすの上に立ち上がる。
するとその後が車椅子では、この簡易車椅子席はまったく見えない。
さすがバリアフリー度5位だけある、とは、1つも思えなかった。
やっぱり5位なんだな、というか。
同じ金額を払って、試合が見えないというのは、やはり考え物だと思う。
こういう状態まで想定ができていないんだな。
その席のおかげで、雨に打たれないで済んだけれど。
それに気づいてくれたサポーターは、旗で見えなくないかとか、
海外のいろんな言葉で話しかけてくれて、
一緒に写真の撮ったり、交流を図って輪にいれようとしてくれた。
けれど、試合が始まってしまえば、やはり見えないわけで、
立ち上がれるあゆは見れるからいいけど、そうでない人が圧倒的に多い。

車椅子席全景
ココがうわさの簡易車椅子席・全景

人の温かさを知れた変わりに、
試合が見えないというのもどうなんだろう。

席について一安心。
トイレに行くと、龍麺のカン兄様に偶然会った!
ご飯を買いに行く時に行こうと思ってたんだけど、
その前の再会がうれしかった。
もうTRUCKをやめて3ヶ月会っていなかったから。
国際競技場に行ったら、北スタンド側の龍麺で買い出しと言うのは
決まってるからね。
迷わず悠々さんに、行こう!って誘った。
会えるとやっぱり嬉しいよ。

決勝戦のオープニングセレモニー。
おみこしや、簡易富士山の再現など
無理にでも日本をアピールしようとしてるくらい、
ちょっといじらしいところが面白かった。
もちろん日韓共同応援ソングもやるわけで、
あゆが一番楽しみにしてた(笑)CHEMISTRYを生で観て、聴いて。
思わず「カッコイ〜♪」と、黄色い声をあげちゃうくらい叫んで、一緒に歌ってた。
アナスタシアもかっちょいい歌声と、迫力あるボディに、あゆは感動。
試合開始前に、相当テンションが上がるのでした。(笑)
そして忘れちゃいけない、あゆ宅流観戦方法。
選手紹介を見てカッコいい選手を探して、集中的に応援するのです。
逆に好みの顔じゃない選手には、レッドカードコールが響くと言う、
なんとも無残でミーハーな観戦方法。
しかし好みの人は、残念ながら決勝にはいないので、
おとなしくチームを応援することにした。
ちなみに今大会で我が家の評判は、
稲本=かわいい。鈴木=カッコイイ。ベッカム=ステキ。
ゴン=最高!(笑)。戸田=トサカがつぶれて面白かったから許す(爆)。
ヒデ=やっぱヒデ。小野=お洒落さん(靴が可愛い)。以上でした。

ドイツサポーターさん試合開始から、立ったり座ったり疲れる状態。
あゆの席はドイツサポーターの後ろに設けられていて、
前半は攻めてくるとみんな立ち上がり、失敗に終わると号令をかけたように、
きちっと一斉に座りこむ。
何度も続くとおかしかったけど、その立ち上がるタイミングを覚えるまでに、
いいプレーが少なくて良かったよ。
だって見えないんだもん。
あっという間に過ぎていった前半だけど、ここからだって気合いも入ってきた。
いやいや、あゆがプレーするんじゃないんだけどさ。
後半ロナウドが押し込んだ1点目、
悠々さんがカーンに押さえられてがっくりしていたんだけど、
あゆの歓声に慌てて顔をあげた。
2人で飛びはねて喜んだと思ったら、2点目まで入れてくれちゃって大騒ぎ。
周りの目は、もはや気にならなくなっちゃいました。(笑)
試合終了のホイッスルで、また1つ大騒ぎ。
よく知らないチームだってさ、がんばったって感じて、なんだかじぃ〜ん。
それから、ドイツもがんばってたって思うから、あゆなりに拍手。
表彰式があって、千羽鶴が舞い降りて。
オリジナルロゴ入り折り紙を横浜の小中学生が折ったんだって。
たくさん屋根から巨大扇風機みたいなので撒き散らして、
あゆが取りに行けないから悠々さんが取りに行ってくれた。

winningRUN
欠点のあった観戦状況だったけど、現地スタッフはそれでもがんばっていた。
見えない事はその人のせいではないのに、ずっと謝っていたり。
「VIPの人がエレベーターに乗っている」と言う話があって、
その人たちこそ階段使うようにして欲しいと、
理解の仕切れていないスタッフとモメてまで、車椅子のお客さんということを、
とてもアピールしてくれていた。
あゆと悠々さんの後姿
終わった…

また、駐車場口でしか、エレベーターが止まらないと言い張るスタッフに
“チェアウォーカーは車で来場すること”なんてどこにも書いていないんだから、
なんて思っていれば、電車で帰る人がいると説得してくれていたり。
そういった人は、ゲートまでしか案内できずに、駅まで気をつけてくださいと、
声をかけてくれて、仕事だけじゃない、
人としてすごく大切な事を知ってると感じた。
帰り道は雨。
それでもサポーターは喜んでいて、濡れるコトなんかおかまいナシの道。
陽気で楽しいお祭りと、波乱に飛んだ激戦の31日間は、
こうして幕を閉じたのです。

近づき始めた日本と韓国。
そして、見守ってきた世界中の人々。
W杯決勝戦、ドイツ対ブラジルは、大本命の初対決はブラジルの勝利で終わって、
その瞬間にいられたあゆ、ちょ〜感動!
だけど、裏には裏のドラマがあって、
『あゆが観戦に行く』というだけでも、たくさんのドラマがあって、
いろんな出演者の人がいた。
そしてあゆもいろんな人のドラマの出演者になった。
“人の触れあい”や“あたたかさ”というのは、W杯で一番大切なものかもしれない。
そして、これからずっと続いていくもう1つのドラマでいてほしい。
その中に除かれることなく、チェアウォーカーを始め、
障害者も少しずつでいいから、参加できますように…。

以下はあゆが神奈川新聞に書いた記事へのジャンプです
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